11代目のブログ

プラシーボ効果と一升瓶

プラシーボ効果と一升瓶の画像

 古民家の庭に2本の松の老木がある。暑い日が続き、ここ何週間もまとまった雨が降らない。何となく気のせいか、一部の葉が黄色くなってきているようにもみえる。そこで1本当たり10分くらい井戸水をかけてやった。なんとなくみずみずしくなり、一安心した。

 この地方では、老木の松を百年松という。古いという意味だ。この松たちは、文書も口伝もなくいつ植えたのか分かっていない。しかし、根本付近の木の曲がりは自然にできたものでないことだけは見て取れる。 父親は、夏はいつも朝晩に松と苔にしっかりと水をかけていた。
 松はある庭師に毎年剪定を依頼していた。父の没後は母親が守ってきた。ある年は夏の長雨で剪定が秋にずれ込んだ。庭師は「臭い、臭い」と言いながら剪定していた。松の枯れ葉に長雨と暑さが加わり、カビ臭いらしい。
 ところが、一月も経たないうちに低い方の松のあちこちが茶色くなり、一部の枝がおおきく枯れ始めたのである。庭師に連絡すると、「ウーン」といい何か薬剤を根元に注入した上で、「酒をやれ、酒をやれ」としかいわない。仕方なく一升瓶の2、3本を周囲にまき散らした。
 
 幸いに次の年は生き返ったが、いかんせん松は茶色と緑の全身虎刈り状態になった。枯れた枝は二度と復活しない。芽生えた芯を伸ばして再度つくりあげるしかない。そうこうするうちに庭師は仕事中の怪我で引退、しばらくは自分で剪定をしていた。昨年、腕の良い庭師と知り合い、剪定してもらった。ところが、老木であるにもかかわらず若い木と同じように刈り込みすぎてまた枯れそうになった。
 今年の春先になっても元気がなく茶色いまま。5月末になっても他の家の松は芯がすっきり伸びているにも関わらず、我が松は二本とも芯が一つも立ってこない・・・。『枯れたら切るしかない』、半分以上諦めたつもりだった。
 しかし6月になり、若干の虎刈りは残ったが何とかまた生き延びたみたいだった。

ところで、あの酒は何だったのか?それはプラシーボ効果、松の持ち主に効くだけのものかも。

写真:百年松-枯れ枝がみえる (2023年8月撮影) 2023.8.24記