エアコンのない家も結構あるという話を前々回書いた。
実は百年松の古民家にもエアコンはない。
なくても過ごせたからだ。北西側、家の裏には鬱蒼とした屋敷林があり、敷地全体の熱気を和らげる。なぜか、屋敷林の方角から田んぼを渡ってくる爽やかな風は冷気を伴っている。盛夏、屋敷林側の掃き出しサッシを開けて廊下でうたた寝をする。30分もしないうちに、身体が冷えて目を覚まし、サッシを閉めてしまうくらい涼しい。床が高く、天井も高いのも涼しい秘訣かも知れない。床下は風が通り、天井近くの窓は熱い空気を外に排出する。理にかなった生活だ。
今住んでいる家は街のなかにあり築30年くらいの家だ。数年前に古民家から引っ越しをした。屋敷林もなく日陰になる木もないからひたすらエアコン生活になる。また、田んぼを渡ってくる風もない。都会地のアスファルトジャングルよりは少しましだが、暑いものは暑い。
私の父は仕事場にも家にもエアコンがない生活をしていた。扇風機と団扇があれば夏場を乗り越えられた。
今はそうはいかないかも知れないが、結構屋敷林と田んぼを渡る風と扇風機でやりくりしている高齢者は多い気がする。スマホを持たないで生活しているのと同じだから、あまり忖度することもないのでは、とも思える。
ただ一つ難点は、風が止まった夜はそれこそ熱帯夜になる。盆明けの虫の声が聞こえ始めるまで我慢と己に言い聞かせ、熱帯夜をやり過ごしてきた。
それは高齢者の身体の負担になり、体力を奪うに違いない。ここ数年の熱風含みの暑さは尋常でない。我が古民家にもエアコンが必要かも知れない。
写真:夏はレジャーの季節 (2023年8月撮影) 2023.8.25記