11代目のブログ

醸し出す空気

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 またまた、くだんの白髪の紳士が訪ねてきた。
 請求書をわざわざ持参してくれた。私は郵送でいいと言っておいたのだが、家人が来てもらいたいと思い、仕組んだものだ。
 私は、40年くらい前に数年間、仕事上でお世話になり、そのうちこの地方を離れお付き合いはなくなったのだが、家人はある会社の総務付であったため、家人が退職するまで長いお付き合いがあった。
 
 本当の狙いは、パソコン操作というか財務処理ソフトを教えてもらいたいためである。当社のある役員は堪能であるが、私は財務表なんて全く読めないから、教えることもできない。ある役員は遠方に住んでいるし、今年のお盆も帰って来られないくらい、仕事に縛り付けられていて、教える余裕がない。
 そこで、教えてもらいたいという依頼を、私の同席のもと話したかったのだ。

 そんなことなど、あれやこれやいってるうちに、まだ会社のインボイスの対応が出きっていない旨を話す。会社内に専門家がいるのだが、音沙汰が全くないといったらちょと驚いた風だった。
 私が「インボイスって、関係の記事などを読んでもちっともわかんないのだけれど」と話す。そうするとくだんの白髪紳士は、丁寧にわかりやすく説明してくれ、「そういうことか」と納得できた。昔から、パソコンの管理や、プログラム作成をしてもらっても、きちんとわかりやすい説明をして帰って行く。
 彼の場合は、人から聞いたら凄い勉強家ということだったが、それとともに実務にも大層優れていた。一言で言うと経験も豊かということだ。それと営業マンでもあったため、世間が広い。

 またまた、コーヒーを飲み、ちょうど今日はお彼岸なので家人の作った『ぼた餅』をちょっとつまみ、結構な時間滞在して帰っていった。お父さんのためにぼた餅6個を持って帰っていただいた。

 彼は、人を引きつける魅力がある。経験の豊かさと、豊富な知識だ。それと誠実な人柄。対面している数メーターの距離が、情報空間にもなり、知的な会話の空間にもなる。とても居心地の良い空気を醸し出す。

 他の人の心を知ること、内面を知ることはできないのであるが、その人と接してわかっていること、服装、オシャレの仕方、身体の動作や表情、会話の仕方、そして醸し出す空気で読み取れないことはない。それは、専門家であると本気になるのだろうが、私は貸し大家でしかないので、空気を楽しみ、他は考えない。

 ちょうど、お帰りなった頃、他の役員からも連絡があり、ある物件の検討をテレビ会議方式で行った。買うかどうかであったが、結論は出さなかった。やはり、銀行から借りても、収益性がどうなるかである。そして、その物件の入居率というか、借り手の属性がどういうことになっているのか、いくのか、今後2、30年まで想像力をたくましくて考え抜く。対象を学生で考えるのか、転勤者で考えるのか、家族持ちを考えるのか。その人たちの収入層はどう考えるか。貧乏会社なので、余計に銀行の返済が気になる。

 会議が終わり、ホッとして椅子に座る。

 私は黙ってはいたが、インボイス講演料を払いたくなるようだった、のが本当のところだとふと思った。

写真:ビー玉の輪 この表現者の異界で奔放に遊んだ心からでた作品姿 この姿が醸しだす静寂さは私に感動を与える  (2021年12月『みてね』からの転載)2023.9.23日記