田舎の別荘にいる
のんびりさせてもらっているが、雑用は多岐にわたるので、結構忙しい
別荘といっても、田舎の居宅でしかない
しかし、水田を渡る風は、緑の林で清められ涼しいし、目にも優しい
都会地のムッとした、機械の廃熱やコンクリートの反射熱に取り囲まれた感触はない
そんななか、先月から深山荘の庭の手入れを頼める人たちを2人見つけ、私と3人で3年ぶりの剪定を始めた
じつは、私の庭は広い
350坪もある それに付属する屋敷林が178坪、隣接する雑種地(元畑地)が425坪という、とんでもない敷地を有している
水田、山はその他になる
年間の固定資産税は、全て合わせてたったの10数万円でしかないが、その維持管理費が高いものについている
涙が出るようだ
だから、専門の庭師は使えない 百年松くらいしか頼めない
そこで、80歳と73歳の全くの素人を頼んだ
柿の選別や、新米の運搬や、農家の手伝いをしている、とても年令にかかわらず体力も充分にある2人である
私の方が、よほど健康寿命が低くなるような傾向でしかない
そのかわり、剪定は全くの素人である
Aさんから頼み、6月中につきっきりで一緒にやって見せた
だから、なんとか任せても良いくらいになった
Bさんとは、それがなかった
神戸から指示をしたのだ
それがまずかった
戻って、庭木をみたらイチイ(オンコ)の枝が無残にも何本も切断されていた
イチイは、生長が遅く年輪が詰まった良材となり、弓の材としてもよく知られる
というか、松と並びに珍重される庭木の雄である
松が王なら、イチイは女王である
そのえだが無残にも、切り落とされていた 何百年前から、先祖が大切にしてきた坪ノ内(座敷の専用の庭)の中心の木をだ
大きな大木で、杜の主みたいに、山のようにボオッと居座っていた
その彼女のロングスカート部分がなくなりブラウスと頭髪部分が残った そしてブラウスはしわくちゃと頭髪はボサボサ そのうえ、つま先から腰のあたりまで露わになり、素足と腰回りが下着に覆われているだけ 全くこちらががっくりするくらいで、正視できない みられたものではない
愕然とした
しかし、Bさんを責められない
私が不明だったということしかない
その次の日から、2人を庭に入るようにすでに依頼してある
下見をしたので発覚したのだ
さて、どうするか
どのように回復するか
最初は、新たなイチイをどこから持ってきて植え替えをするかとも思った
しかし、立派なイチイは、売っていない 地域の各家にそれぞれシンボルとして植わっているものが風格もあり、よろしいものが多く、散見される
つまり、無理だということだ
では、どうするか
そう、
振り返ると、
そんな無理難題はいくつもあった
それは、賃貸業をするなかで借主からいわれることだ
そのつど痛い目に遭ったり、どう処理するか途方に暮れることも多々ある
それとおんなじだなァ、なァ・・と思ったとき
いつもそれが自分の思考の肥やしになっているなと思い至った
だから、じゃあこの酷い経験をどう使うか、ということだ
植え替えるのではなく、これをどうするかである
この状態から、新しい姿をつくれるかである
それには、ヒントがあった
庭にもう1本の青年期のイチイの姫がいる
ところが、枝が次々に枯れて、最後は木自体を枯らしてしまうのではないかと、常に不安を抱えていた
2年前、夏の渇水期に、何となく思った 『父親がいつも水をかけていた』、のを思い出した
百年松の他に、このイチイも丁寧に水をかけていた ふと、ネットで検索した
『イチイ 特性』とすると、木の幹自体が繊細で、強い日差しに弱いとあった
そうか!
そのイチイは、午後夕方まで、西日で日焼けで火傷をしていたのだとわかった
枯れた枝葉全て幹の中央で、西側の枝ばかり枯れたからだ
そして、毎日姫に水をかけた 幹にも充分に
そうしたら、幹に芽がついてきて、2年後には密生したり、枝みたいに伸びてきた
成長が遅いから、枝とは言えないにしても、それなりに伸びてきたのだ
そうか、くだんのイチイは姫どころか、古い古いグレーテルの森にいるような、魔法使いのお婆さんだが、何とか若返らせ幹に芽を出させようと思った
少し栄養剤の幹への注入も必要であろうが・・
そして、その結果は私の子孫が恩恵を受けられるかも知れない
長ーい、長ーい
刻に任せることにした
写真 別荘生活の日々 今日、用があり30kmのプチ外出でのショット 海が特に良かった 青くもなく、水色でもなく、灰色でもない 何という色なのだろうか 鉛翠いろ? 鉛水いろ? 灰青いろ?
先ほどの、Bさん
下見の次の日、早速仕事を始める すると鋸をもちだす 私の持ち物である そして、切るとこがないのか庭木を見渡し、適当に切ろうとする Aさんは、自分の剪定鋏を持ち出し、早速剪定するのだが、どうもBさんは剪定とは鋸でするものだと思っているようだ
つまり、全ての庭木を裸同然にしたのは、Bさんの思い込みであったのだ
すぐ、近くのホームセンターに行き剪定鋏¥3,500円を仕入れ、Bさんに永久貸与とした
つまり、まあ、素人への事前研修がなかったのだということさ